姫路 黒桟革

革に、漆。手に生まれ、時に磨かれる。

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THE HIDE / 原皮

原皮は黒毛和牛。鞣すのは、姫路。

すべての原皮は、国内で食肉として育てられた黒毛和牛のもの。
革のために育てられた牛は、一頭もいない。
命をいただいた後に残る皮を、最上の革として生かす。
輸入も、混合もしない。単一の原皮だけが与える、質の均一のための選択である。

姫路は、千年近く革を鞣してきた土地だ。
市川の水。瀬戸内の乾いた気候。何代も受け継がれてきた手。
いまも国内の牛革の約七割が、この播磨の地で生まれている。

届いた原皮には、傷がある。虫の刺し跡がある。
それは、一頭が生きた記録である。
その一枚を、どう生かすか。仕事は、そこから始まる。

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THE HANDS / 手揉み

シボは、型で押すものではない。

鞣した革を、職人が手で揉む。
力のかけ方、向き、回数。
面に凹凸が浮かび上がるまで、時間をかけて起こしていく。

近道はなく、型もない。
同じ手つきで揉んだ二枚が、同じ表情になることはない。
はじまりの一枚が、そもそも同じではないからである。

この工程が、漆を可能にする。
シボがなければ、漆の置き場所がない。

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THE LACQUER / 漆

漆を、重ねる

漆は曲がらない。革は、曲がることしかしない。
固まった漆は、撓む前に割れる。
両者を結ぶことは、本来できないはずだった。

答えは、シボにある。
漆は、手で起こした山にだけ置かれる。
革が動くとき、力は谷へ逃げていく。
山の上の漆は割れることなく、艶を保ちつづける。

塗り、室(むろ)で固め、また塗る。
漆は乾くのではない。湿り気の中で、ゆっくりと固まる。
仕上がりを決めるのは工程表ではなく、革である。
一枚に、幾週間。一か月に生まれるのは、二十枚ほど。
この工程を急がせる方法は、存在しない。

そして、纏う人の手に渡ってから、山の漆は少しずつ磨かれていく。
艶は、着るほどに深くなる。

  • Bishu MELTON Wool

    羊毛に、水。水に締まり、歳月を経て、なお立つ。

    尾州へ 
  • Kyo-Ori Jacquard

    糸に、色。京都で織られ、内側にだけ纏う。

    京都へ 
  • Hanyu Tailoring

    布に、針。最上の仕事は、見えない場所にある。

    羽生へ